病院の建て替えを成功させるためのポイントとは?メディカルウェアの刷新によるイメージアップ効果も解説
病院の建て替え、今がその時?最適なタイミングとは
病院は一般的に、竣工から30~50年が経過すると、建物の経年劣化により亀裂や雨漏り、耐震性の問題など、施設自体にさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
日本では、高度経済成長期やその後の医療拡充政策の影響で、1970~1980年代にかけて多くの病院が建設されました。そのため、建設から数十年が経過し、建て替えや改修の必要性が高まっている病院が増えていると考えられます。
時代の変化に伴い、病院に求められる役割も多様化しています。最新の診断機器の導入や精密医療のための設備投資、遠隔医療のための通信インフラの強化などが求められていますが、これらに対応できない施設も少なくありません。このような背景から、建て替えの重要性はさらに高まっています。
また、厚生労働省の調査によると、患者が病院を選ぶ理由として「建物がきれい・設備が整っている」が挙げられており、特に入院時にはその割合が高いことがわかっています(外来患者では7.7%、入院患者では10.3%)。
患者に選ばれる病院を目指すには、建物の新しさや清潔さ、充実した設備が重要なポイントといえます。
※出典:厚生労働省「受療行動調査」
病院の建て替えにかかる費用・期間の目安
近年、資材価格や人件費の高騰を受けて、病院の建設費は上昇傾向にあるとされています。
独立行政法人福祉医療機構が公表した2023年度のデータ※によれば、病院の建設費は平米単価で411千円、定員1人(1床)当たり建設費は23,872千円です。特に、2014年度以降の10年間で平米単価は1.49倍に上昇しています。
※出典:独立行政法人福祉医療機構「2023 年度 福祉・医療施設の建設費について」
例えば、200床規模の病院を建設する場合、定員1人当たりの建設費23,872千円を200床に掛けると、約47.7億円が目安となります。
さらに、医療機器や備品・什器の更新費用、IT・通信設備の強化費用、既存病院の解体費用なども必要に応じて発生します。
建設期間については、200床規模の病院の場合、基本構想・基本計画に6〜10か月、設計・施工段階で24か月以上が目安とされます。したがって、200床規模の病院の建て替えには、基本構想の開始から完成まで最低でも2年半から3年以上の期間が必要です。
建て替え計画の進め方
病院の建て替え計画は、以下のステップに沿って進めていきます。
ステップ① 病院の将来的なビジョンを描く
まずは病院の未来のビジョンを基本構想として描きます。基本構想は病院の理念に基づき、「将来的なあるべき姿」を念頭に置いて策定します。
主な検討項目は以下の通りです。
・診療科目の構成
・基本的な機能(外来、入院、在宅など)の構成
・病棟構成
・新病院のコンセプト など
建設のステップが構想→計画→設計と先に進むほど変更に伴うコストが大きくなるため、基本構想の段階では変更に備えて何通りかのシミュレーションを行うことが重要です。基本構想を精緻に策定することが、新病院成功のカギとなります。
ステップ② 計画の費用対効果を見極める
投資と経営のバランスを踏まえ、事業性の面で問題がないか検討します。
計画段階では現場から病床や手術室、外来スペースの拡充、最新の医療機器・設備の導入、快適な休憩場所の整備など多くの要望が上がり、それらすべてに応えようとすると過大な投資になる可能性が高まります。
そのため、費用対効果を踏まえながら本当に必要なものは何かをよく検討し、優先順位をつけることが重要です。投資額が過大になり費用を回収できないと過剰な負債を抱えることになり、将来の経営環境に深刻な影響を与えかねないため、慎重に見極めなければなりません。
ステップ③ 基本計画をしっかり作成する
基本構想をもとに具体的な計画を練っていきます。
具体的には、階層構成や各棟の機能配置を概略的に図表に落とし込みます。施設のレイアウトでは、診療科間の連携や動線、患者さんやスタッフの利便性を考慮して設計することが重要です。
具体的な予算やスケジュールもこの段階で固めていきます。施設規模や設備の内容を反映し、建築費や設備費を賄えるだけの予算を確保します。自己資金はもちろん、民間の金融機関からの資金調達、国や自治体、政府系金融機関からの助成金、低金利融資などの活用も選択肢に入ります。コストの試算は建築コンサルタントや病院運営の専門家に依頼するとよいでしょう。
スケジュールについては、プロジェクトの主要な段階(例:設計完了、施工開始、移転準備など)をマイルストーンとして設定し、それぞれについて達成すべき時期を決めていきます。そして、各工程の期間を同規模の他の事例や専門家の意見を基に見積もります。その際には、天候や資材不足などのリスクに備えて、ある程度余裕を持ったスケジュールを設定することが理想です。
予算やスケジュールを設定した後は、病院スタッフ、行政、地域住民などの関係者に計画を提示します。関係者からのフィードバックを受け、意見を反映しながら現実的な範囲で計画を調整していく必要があります。
ステップ④ 設計から施工へ
基本計画に基づき、具体的な設計と建設を進めます。
以下の通り、基本設計と実施設計、施工のステップがあります。
・基本設計:
基本計画で策定された内容を図面化し、検証作業を繰り返す段階です。諸室の規模や動線の確認、診察室や外来待合スペースなどの項目を検討し、病院運営に必要な項目をすべて落とし込みます。
・実施設計:
基本設計をベースに詳細な図面を作成する段階です。コンセント・非常用電源の設置箇所や位置などの詳細を決定し、診察室や病棟、検査課ごとに担当者と一つひとつ図面確認を行っていきます。
・施工:
実際に建物を建設する段階です。施工会社が実施設計図書を基に工事を行います。施工期間中には、計画通りのスケジュールで進行しているか確認する工程管理や、予算超過を防ぐためのコスト管理を徹底します。
ステップ⑤ スムーズな移転計画
移転のプロセス・手順を事前に計画し、移転に伴う混乱やコストの発生を最小限に抑えます。
医療機器、什器・備品、病院家具の搬入・設置や、患者さんの移動の手順、連携の確認などを十分に行うことが重要です。
ステップ⑥ 新しい運営体制でのスタート準備
新病院でのスタートに向けて、設備やシステムの試運転を行い、問題があれば事前に解決します。同時に、新しい設備やシステムの操作についてスタッフへの教育を行います。
また、地域住民や関係者に新病院の開院について周知します。
病院の建て替えを成功に導くためのポイント
以下では、病院の建て替えを成功させるためのポイントを解説します。
検討は早めに行うべき!
病院の建設・建て替えは長期的なプロジェクトであり、各段階で慎重な検討と準備が必要ですが、特に基礎調査、基本構想、基本計画の検討といった初期段階での計画立案が非常に重要です。この段階での検討レベルが不十分である場合、手戻りや計画見直しの原因となる可能性があるため、スケジュールに余裕をもって早期に検討することが成功のカギを握ります。
現実的な予算と資金計画を立てる
建て替え計画は長期のプロジェクトであるため、現実的な予算と資金計画の立案が不可欠です。長期的な視点での資金調達計画を立て、予備費も確保しておくとよいでしょう。
また、建て替えに伴う投資のコストは数十年をかけて少しずつ回収していくものであり、初めに巨額の投資を行うと回収の目途が立ちにくくなります。そのため、最初に必要な投資は何かを見極めて初期の事業費を抑え、段階的に投資を行っていく視点が必要です。
患者の立場に立って考える
病院の主な利用者である患者さんの立場・視点を重視することも重要です。
例えば以下の点を考慮する必要があります。
・診察室や外来待合スペースの使い勝手が良いか
・スピーチプライバシー(会話が第三者に漏れ聞こえないようにすること)が確保された院内環境になっているか
・患者さんの動線を踏まえた階構成、平面構成になっているか
・バリアフリーやユニバーサルデザインなど、患者さんの安全性を考慮した設計になっているか
・衛生状態や清潔感は維持されているか など
病院のリニューアルに合わせたメディカルウェアの見直しを
病院の建て替えは、メディカルウェアのリニューアルを検討する絶好のタイミングです。
新しい病院に合わせてメディカルウェアを新調することで、患者や地域住民に「病院が新しく生まれ変わった」という印象を強くアピールできます。メディカルウェアに病院のロゴやデザインを反映させ、統一感を持たせることで、ブランドのイメージアップにもつながります。
さらに、従業員の士気やチーム力を向上させる効果もあり、リニューアルに際してスタッフの意見を反映することで、病院への愛着が生まれ、より良い職場環境が作られます。
オリジナルのメディカルウェア(白衣)の導入について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。オーダー方法や導入のメリット、費用相場などを解説しています。
導入で解決できる課題や費用相場とは
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ラフィーリアでは、建て替え後の病院の雰囲気に合わせられるさまざまなユニフォームを取り扱っており、病院の規模や着用時期、予算に合わせて柔軟なご提案が可能です。
多くのアパレルブランドを展開してきたオンワードコーポレートデザインのノウハウを生かし、デザイン性と機能性に優れたメディカルウェアを提供できます。
また、リニューアルに際しては、スタッフの意見や要望を反映させることで、より一体感のあるデザインを実現できます。病院の文化や雰囲気にマッチしたユニフォームは、患者様にも安心感を与え、快適な環境づくりをサポートします。
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お役立ち資料
医療従事者のユニフォームである白衣は、着ているスタッフだけでなく、病院やクリニックの印象そのものを左右します。白衣も洋服ですから、私服を選ぶときと同様に、着ていて心地良く、気分を高めてくれるものを選びたいものです。服選びは、どうありたいかを示すことにもつながります。本書では、働く人も院全体も、魅力の高まるユニフォームを選ぶためのポイントをご紹介します。