人手不足解消・離職防止策

看護師の働き方改革とは?ポイントや注意点、持続可能な職場をつくるための取り組みを紹介

2025.03.25
長時間労働や人手不足といった課題を抱える医療現場では、看護師の働き方改革が求められています。政府も2019年から働き方改革を推進しており、時間外労働の上限設定や有給休暇の取得義務化など、職場の環境を見直す動きが加速しています。しかし、「働き方を改善したいと思っても、具体的に何から始めればよいのかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか。働き方改革を進めるうえでは、制度の導入だけでなく、現場に合った工夫や取り組みが重要です。本記事では、看護師の働き方改革を進めるポイントや注意点、現場で役立つ具体的な施策について解説します。職場環境をより良くするためのヒントを、ぜひご覧ください。

看護師の働き方改革とは?その背景と目的

看護師の働き方改革とは?ポイントや注意点、持続可能な職場をつくるための取り組みを紹介

政府は2019年から「働き方改革」を推進しており、看護師を雇用する病院もその対象に含まれています。以下ではまず、看護師の働き方改革のポイントや注意点、必要な理由を解説します。

看護師の働き方改革の概要と5つのポイント

働き方改とは、「労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる」ようにするための取り組みのことです。看護師の働き方改革では、看護師個人の属性や事情を踏まえ、健康や安全に配慮し、持続的に働くことができる環境づくりが求められています。
看護師個人の属性や事情としては、子育てや介護のための時短勤務、あるいは看護師自身が高齢であるためにフルタイムで働くのが難しいといったケースが挙げられます。

看護師の働き方改革のポイントは以下の5つにまとめられます。

ポイント①:時間外労働の罰則付き上限規制の導入

1.時間外労働の上限を月45時間、年360時間に設定し、この範囲内で36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)を締結します。

2.1.を超える時間外労働に従事させる場合にも、上限時間の規定(年720時間 以内)、複数月平均80時間 以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を守って36協定(特別条項月)を締結します。

ポイント②:年次有給休暇年5日取得の義務化

1.有給休暇を取得させる日は、労働者本人の意向を聞いた上で事業主(管理者)が指定します。

2.有給休暇管理簿を作成し、労働者本人に取得状況を周知します。

3.有給休暇取得について各部署でおおよその年次計画を策定することや、有給休暇取得を前提とする人員配置とすること、有給休暇申請のルールを再確認するなど、職場の仕組みを整えます。

ポイント③:客観的方法による労働時間記録の義務化

1.タイムカードやICカードなどによる客観的な方法での勤務時間の把握が必要となります。

2.出退勤時刻の記載のない押印方式の出勤簿からの切り替えを早急に進めます。

ポイント④:同一労働同一賃金の導入

1.同一企業内において、正規雇用者と有期雇用労働者(非正規雇用者)の①業務内容と②職務内容・配置の変更範囲が同じである場合、均衡待遇※の確保が義務化されます。
※雇用形態に関わらず同じ仕事をする労働者に対して同じ待遇を与える原則。同一労働同一賃金における重要な要素。

2.短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明が義務化されます。

ポイント⑤:勤務間インターバルの努力義務化

1.事業主の努力義務として、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息(11時間以上のインターバル)を確保します。

出典:公益社団法人日本看護協会「看護職の働き方改革」
出典:厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要」

看護師の働き方改革に関する3つの注意点

看護師の働き方改革に取り組む際の注意点としては、以下の3つが挙げられます。

①全病院が対象である
規模の大小を問わず、すべての病院が対象です。個人経営の病院であっても、雇用者がいるのであれば働き方改革の原則が適用されます。

②院内研修も労働時間に含まれる
業務上の必要性から受講を指示された研修や教育訓練も労働時間に含まれます。また、指示による自己学習の時間や、申し送り、看護記録の記入、更衣など、看護業務の前後の準備・雑務も労働時間として扱います。これらの業務が時間外に行われている場合は、時間外手当を支給する必要があります。

③有給休暇は本人の意向を尊重して取得
有給休暇は看護師本人の希望に沿って取得できるようにすることが原則ですが、緊急外来や入院患者のケアなどが必要な病院もあるため、多くの看護師が一斉に有給休暇を取得するのは避けたいところです。そうした場合には、有給休暇の計画的付与を労使協定により締結しておくと良いでしょう。

看護師の働き方改革が必要な理由

日本では高齢化の進展により、今後さらに医療・福祉のニーズが増えることが予想され、看護師をはじめとする医療従事者を確保する必要性が高まっています。

一方で、少子化により看護師のなり手不足が懸念されており、若年看護職の大幅な増加は見込めない状況です。また、看護職は夜勤や急患への対応、時間外での研修・勉強会への参加などでワークライフバランスを確保しにくく、さらに女性が多いことから妊娠・出産、子育てなどによる休職・離職も少なくありません。

そうした中で優秀な看護師を十分に確保し、質の高い看護体制を維持するためには、看護師が健康で長く働ける持続可能な働き方の実現と、それを支える職場環境の整備が不可欠です。

看護師の労働現場で直面する主な課題

看護師の労働現場は過酷なところも多く、以下のような課題に直面しているため、働き方改革の着実な実施が求められています。

長時間労働の問題

日本看護協会の2022年の調査によると、8割以上の看護師が時間外労働を行っており、月平均の時間外労働が10時間以上の看護師も約15%いるといわれています。

時間外労働が発生しやすい原因としては、書類の作成業務、急患への対応、研修・勉強会への参加、勤務交代時の引き継ぎなど、看護師ならではの業務が挙げられます。
長時間労働が常態化している現場は求職者から敬遠されやすく、人材確保が難しくなるため、早急に働き方改革に取り組む必要があります。

看護師の時間外労働の実態や残業削減のための方法についてはこちらの記事をご覧ください。

人手不足による業務負担の増加

看護師の人材需要の増大や看護師の離職率の高さといった背景から、看護師の人材不足に直面している医療現場も少なくありません。独立行政法人福祉医療機構経営サポートセンター リサーチグループの調査によると、一般病院の経営上の課題として「職員確保難」をあげる病院が最も多い結果となっています。
人手不足になると一人当たりの業務負担が増え、疲労や注意力の低下から医療事故・医療ミスの発生につながりやすくなるため、働き方改革を進め看護師の業務負担を軽減することは非常に重要です。

医療現場の人手不足の原因や対策についての詳細はこちらの記事をご覧ください。

ワークライフバランスの実現の難しさ

看護師は日勤と夜勤の交代勤務制が一般的であることから、他の職種と比べてライフワークバランスの確保が難しい職種です。生活リズムが不規則になりがちで、体調やメンタルに影響を及ぼす可能性もあります。
また、女性比率の高い職種であり、結婚・出産・育児などのライフイベントに直面した際に、前述のように仕事との両立が難しい労働環境であるために離職を選択する人も少なくありません。

離職率を下げ、人材を確保するうえでも、育休の取得や復職がしやすく多様な働き方ができる環境を整備することが求められています。

看護師の離職率が高い理由や離職を防ぐための方法についてはこちらの記事をご覧ください。

働き方改革を進めるための取り組み

働き方改革を進めるための取り組み
ここからは、働き方改革を進めるための方法を3つご紹介します。

労働時間の適正化とシフト管理の改善

前述のように、働き方改革の取り組みでは時間外労働の上限が設けられており、上限を超えないように労働環境の改善や業務効率化を進める必要があります。

例えばシフト管理においては、2交代制や3交代制などさまざまな勤務形態を考慮しつつ、看護師個人の希望を踏まえ、日勤と夜勤のバランスに配慮したシフト作成が求められます。
また、年に5日以上の有給休暇を確実に取得できるよう、有給休暇の取得希望日を早い段階で把握したり、休暇の取得状況を管理・共有したりするなどの環境整備も必要です。連続での休暇取得を奨励する制度を導入するのも良いでしょう。

後述のテクノロジーの活用をはじめ、残業時間削減のための取り組みを進めることも重要です。

業務効率化を促進するテクノロジーの活用

業務効率化を進めるためにはテクノロジーの活用が効果的です。
例えば、音声入力アプリ、電子カルテ、院内マニュアルの電子化などのICTを導入することで、業務効率化や生産性向上が期待できます。
定型的な作業をRPA(ロボティックプロセス自動化技術)に任せたり、自律搬送ロボットで薬剤や検体を自動で患者のもとに届けたりと、AIやロボットを使った自動化技術を導入する方法も注目されています。

また、院内SNSやチャットツールの導入により、看護師同士や医師とのコミュニケーション、情報共有を円滑にすることも業務効率化につながります。

離職率低下を目指す職場環境の改善

看護師の離職率を低下させるためには、働きやすい職場環境の構築が不可欠です。
メンタルヘルスサポート体制の整備や、定期的な面談や意見交換の場の設置、福利厚生の充実など、看護師の不安や不満の解消につながる体制や環境を整えることで離職率の低下が期待できます。

機能性に優れたメディカルウェアをはじめ、職場環境を快適にするアイテムの活用も効果的です。

医療従事者の離職を防ぐ職場づくりの方法についてはこちらの資料をご覧ください。
医療従事者が辞めない職場づくりのアイデア

【事例】メディカルウェアの色分けで残業時間を削減

業務効率化を進めるためのメディカルウェアの活用例として、日勤・夜勤でウェアの色を使い分ける方法があります。これにより日勤と夜勤のスタッフが一目でわかり、引き継ぎをスムーズに行えるようになります。

例えば、国立大学法人 福井大学医学部付属病院では、日勤と夜勤のユニフォームの色を変えて勤務と非勤務を明確化しました。それまでは引き継ぎ可能な業務をシフト終わりの看護師が残業して行っていたために超過勤務が発生していましたが、ウェアの色分けをしたことで勤務終了時刻を過ぎて残っている職員が明確になり、誰に声をかければ良いか一目でわかるように。その結果、年間900時間の残業時間削減につながりました。

まとめ:看護師の働き方改革で持続可能な職場を目指そう

看護師の業務負担軽減や人材の確保、離職率の低下などに取り組む際には働き方改革の推進が不可欠です。そのためには休暇を取得しやすい環境の整備や、ICT・AIなどのテクノロジーの活用、看護師のサポート体制の充実に加え、メディカルウェアを活用した業務効率化も効果的です。

オンワードコーポレートデザインでは数々のアパレルブランドを展開するノウハウを生かし、品質とファッション性を両立させたメディカルウェアブランド「Raffiria(ラフィーリア)」をご提供しています。豊富なカラーバリエーションを用意しているため勤務時間に応じた色の使い分けを実施しやすく、さらにストレスフリーな高機能素材で快適な業務をサポートします。
これにより業務効率化を図ることができ、働き方改革に貢献します。

ラフィーリアの詳細についてはカタログをご覧ください。

カタログ

「ラフィーリア」総合カタログ(156P)
「ラフィーリア」総合カタログ(156P)

アパレルメーカーのオンワードコーポレートデザインだからこそできる品質とファッション性を両立させた医療白衣ブランド「ラフィーリア」の総合カタログ(156p)です。

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