SDGsのために病院ができる取り組みとは?医療業界が果たすべき役割について
医療業界におけるSDGsとは?
SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年に国連で採択された、地球環境の保護、貧困削減、ジェンダー平等、経済成長など、幅広い分野での持続可能な社会の実現に向けた国際目標のことです。
17の目標とより具体的な169のターゲットが設定されており、先進国、発展途上国を問わず2030年までに達成することを目指しています。
出典:外務省「SDGsとは?」
医療分野は、SDGsの目標の中でも特に「すべての人に健康と福祉を(目標3)」「「質の高い教育をみんなに(目標4)」「住み続けられるまちづくりを(目標11)」などと深く関連します。
近年はホームページにSDGsへの取り組みに関する内容を掲載する医療機関が増えており、医療に直接関わる分野だけでなく、働き方の改善や環境への配慮など幅広い分野に言及している医療機関も少なくありません。
病院もSDGsに取り組むべき理由
SDGsはあらゆる業界で実施することが求められており、医療業界も例外ではありません。
以下では、病院がSDGsに取り組むべき理由について解説します。
社会的責任を果たすため
医療は社会にとって必要不可欠であり、人々が健康に生きていくうえで病院が果たすべき役割・責任は重大です。
SDGsでも目標3において「すべての人に健康と福祉を」が掲げられており、地域や経済的状況などによって受けられる医療の質に大きな違いが生じるのを防がなければなりません。
そこで注目されている考え方としてUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)があります。
UHCとは、すべての人々が経済的な困難を感じることなく、必要な時に必要な場所で、適切な予防、治療、リハビリテーション、緩和ケアなどの保健医療サービスを受けられる状態のことです。健康は人権の1つであり、人種や性別、富や年齢などに関係なく、あらゆる人が平等に保健医療サービスを受けられるようにすべきという理念が根底にあります。
出典:独立行政法人 国際協力機構(JICA)「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」
近年は高齢化や医師不足などさまざまな問題が顕在化しており、そうした課題と向き合いながら適切な医療を提供するためには、病院がUHCを含むSDGsの実現に積極的にコミットすることが求められます。
持続可能な医療提供体制の構築
少子高齢化が進む社会において、持続可能な医療体制を構築していくことは必要不可欠です。
近年は高齢化によって医療や福祉を必要とする人が増える一方、少子化により十分な人数の医療従事者を確保することが困難になりつつあります。特に2025年以降は、人口ボリュームの多い団塊の世代が全員75歳以上となる超高齢化社会を迎え、質の高い医療を提供できる体制が崩壊しかねない問題に直面しています。
さらに医療業界は心身ともにストレスの多い労働環境であることが多く、離職や採用難によって人手不足に苦しんでいる医療現場も少なくありません。
そうした中で持続可能な医療提供体制を維持・構築するためには、医療従事者が働きやすく、かつ働きがいのある職場環境を整えることが求められます。こうした取り組みはSDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に関連し、働く人のケアを怠らず、多様な人材が活躍できる医療現場を実現することで、人手不足の解消を図っていくことが重要です。
経営の安定化と病院の価値向上
病院が社会的責任を果たし、持続可能な医療提供体制を構築するためには、経営を安定させることも不可欠です。
SDGsに積極的に取り組む病院は、患者や求職者にとって魅力的な施設となります。例えば地域の健康促進や予防医療に積極的に取り組むことで地域の住民から信頼され、さらに働きやすい環境を整備することで多くの人材を惹きつけることができ、人手不足の解消が期待できます。
またSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮して経営している病院は、金融機関や投資家から高い評価を受けて資金調達がしやすくなり、経営安定化につながります。
病院ができるSDGsへの取り組み事例7選
SDGsの重要性を理解していても、具体的にどのような取り組みをすればよいのか分からない病院も多いのではないでしょうか。
ここでは、病院が実践できるSDGsの取り組みを7つご紹介します。
1.省エネルギー対策
病院は24時間稼働する施設が多く、大量のエネルギーを消費するため、環境負荷の低減が求められます。そのため、省エネルギー対策の推進が重要です。
具体的な施策として、LED照明や高効率の空調・給湯設備の導入、太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用が挙げられます。
さらに、エネルギー管理システム(EMS)を導入し、エネルギー使用量の「見える化」を行うことで、効率的な運用が可能になります。
省エネ対策を実施することで、環境保護に貢献すると同時に、コスト削減にもつながり、病院の経営安定化にも寄与します。
2.デジタル化の推進
業務のデジタル化を進めることで、効率化が図られ、スタッフにとって働きやすい環境の整備につながります。
また、ペーパーレス化を推進することで、紙資源の削減を通じた環境保護も実現できます。具体的には、電子カルテの導入やオンライン診療の活用が有効です。
さらに、AIやIoTを活用した病床管理や薬剤管理の自動化により、スタッフの業務負担を軽減することも可能です。
3.廃棄物管理の強化
病院では、多種多様な廃棄物が排出されるため、環境保護や感染防止の観点から適切な処理が求められます。
感染性廃棄物と非感染性廃棄物を適切に分別し、法令に基づいた適正処理を徹底することが重要です。
加えて、再利用可能な医療資材の活用や、生分解性プラスチックの使用促進、病院食における食品ロス削減などの取り組みも積極的に進めるべきでしょう。
4.地域医療との連携
持続可能な医療体制を構築するには、地域の医療機関や福祉施設と連携し、地域ニーズに応じた医療サービスを提供することが不可欠です。
例えば、近隣の医療機関と電子カルテを共有することで、患者情報の円滑な連携が可能になります。
また、地域包括ケアシステムの構築や、住民向けの健康講座・イベントの開催も、地域全体の健康増進につながります。
5.災害医療・感染症対策の強化
病院は、災害時や感染症流行時に重要な役割を担うため、十分な対策が必要です。
その一環として、災害発生時や感染症拡大時に迅速に対応できるよう、事業継続計画(BCP)や災害対応マニュアルを整備しておくことが求められます。
さらに、自家発電装置の導入により、災害時でも医療提供が可能な環境を確保することも重要です。
加えて、医療従事者への定期的な防災訓練や感染症対策研修を実施することで、緊急時の対応能力を高めることができます。
6.職場環境の改善
病院を持続的に運営するためには、人材の確保と定着が欠かせません。そのため、働きやすい職場環境の整備が求められます。具体的には、夜勤負担の軽減や柔軟な勤務制度の導入によるワークライフバランスの向上が挙げられます。
また、メンタルヘルスに関するカウンセリングの実施や、ハラスメント防止のための相談窓口設置も重要な施策です。
特に、看護師を中心に女性職員が多い病院では、産休・育休制度の充実や復職支援の強化が必要となります。
7.サステナブルなメディカルウェアの導入
病院で使用する白衣やスクラブなどのメディカルウェアを環境に配慮したものにすることも、SDGsの目標達成に貢献します。
例えば、耐久性の高いウェアを採用することで買い替え頻度を減らし、資源の無駄を削減できます。
また、植物由来のバイオマス素材やリサイクル素材を使用したウェアを導入することで、CO2排出量の削減にもつながります。
ラフィーリアが実現する持続可能なメディカルウェア
病院がSDGsに貢献するためには、省エネやデジタル化に加え、廃棄物管理や職場環境の改善、地域医療との連携、持続可能なメディカルウェアの採用など、多様な施策が求められます。医療の質を維持しながら安定的かつ持続可能な運営を行うことが、これからの病院経営において重要なポイントです。
前章でご紹介したサステナブルなメディカルウェアとして「Raffiria(ラフィーリア)」があります。数々のアパレルブランドを展開するオンワードコーポレートデザインのノウハウを生かし、サステナブルかつ高い機能性とデザイン性を実現しており、多くの病院から選ばれています。
ラフィーリアでは、以下のようなサステナブルに関する取り組みを実施しています。
1.環境配慮型素材を使用した商品開発
バイオマス原料を使用した素材や原着素材など、環境に優しい素材を開発しています。
バイオマス原料は石油を新たに掘り起こす必要がなく、原着素材は染色過程で水の使用量を約40%削減するため環境保全に貢献します。
【バイオマス原料を使用した商品】
・Champion
サトウキビの非可食部分を原料とするバイオマス素材を使用し、廃棄物の削減と地球上の炭素循環を促進します。また石油を掘り起こさないため、新たなCO²の排出を削減します。
ホワイト、グレー、ダークネイビーなど多様な色を取り揃えており、透けにくくソフトな肌触りとストレッチ性を兼備している点も特徴です。
【原着原料を使用した商品】
・Colorfast
環境に配慮しながら、機能性と着心地の向上を追求した人気のシリーズです。
糸になる前の原料の段階で色をつける原着素材を使用。一般的な生地の生産工程と比較して、水の使用量を約40%抑えることができるサステナブル素材です。
繰り返しの洗濯でも色落ち、色褪せしにくく、きれいな色が長続きします。
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2.CLOの導入によるサンプル作製数の削減
ラフィーリアでは、3Dでデザインやカラーのシミュレーションができるシステム「CLO」を活用することでサンプル作製数を削減しています。これにより、資源の有効利用と廃棄量の削減を実現しています。
3.梱包資材やカタログ用紙への配慮
袋の一部にバイオマス原料を、インクには植物由来成分を含む「ボタニカルインキ」を使用しています。またカタログにはSFC認証紙を使用し、環境負荷低減に取り組んでいます。
ラフィーリアの詳細についてはカタログをご覧ください。
カタログ

アパレルメーカーのオンワードコーポレートデザインだからこそできる品質とファッション性を両立させた医療白衣ブランド「ラフィーリア」の総合カタログ(156p)です。