関係性構築

チーム医療とは?
取り組み事例や導入メリット、チームワーク向上の秘訣をご紹介

2024.08.20
チーム医療と聞いて、「チーム体制で医療を行うということは何となくわかるけど、具体的な内容はわからない…」という方もいるのではないでしょうか。チーム医療には医師や看護師はもちろん、その他にもさまざまな職種の専門家が関わり、医療の質や安全性、チームワークの向上に役立てることができます。この記事では、院内のチームワーク向上の方法を知りたい方に向けて、チーム医療の種類やメンバー、取り組み事例や導入のために必要なことを解説します。

チーム医療とは何か?概要を解説

チーム医療とは何か?概要を解説

チーム医療とは、患者さんに対してさまざまな職種の医療従事者・専門家が協力して治療することです。
病院には、医師や看護師はもちろん、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカー、臨床心理士などさまざまな専門家がいます。
各職種における「その道のプロ」たちが、それぞれの専門性を活かして、情報共有しながら連携して治療することで、重症化を防いだり、回復を早めたり、病気の早期発見・予防をしたりするのに役立ちます。

チーム医療が必要とされる理由

これまでは、1人の医師が中心になって治療することが普通でした。ですが、医師といっても専門や得意な分野は人によってバラバラで、専門外のことになるとどう対応すべきか困ることがよくあります。
そこで、各分野のプロが協力して対応することが必要だとして、チーム医療の重要性が増してきました。

また、高齢化が進んでいるために、高齢の患者さんを幅広くサポートする必要があることや、医療技術が進歩し、これまでよりも高い専門性が求められていることなども、チーム医療が必要とされる背景としてあります。

チーム医療のメンバーとその役割

チーム医療はどのようなメンバーで成り立っているのでしょうか?
主なメンバーとその役割は以下の通りです。

チーム医療のメンバーとその役割

●医師:
チーム医療の中心であり、チーム全体に指示を出してまとめる役割があります。診断、治療方針の決定、治療などを行うことはもちろん、患者さん本人やご家族に診断の内容や治療方針などを説明することも医師の役目です。

●看護師:
患者の入院生活全体をサポートするのが主な役割です。体調が悪化していないか把握し、入院中に不安やストレスを抱えないようにしっかりとケアを行います。
患者さんにとって最も身近な存在であり、他のメンバーとの情報共有を主体的に行う役割もあるなど、看護師はまさに「チーム医療の要」です。

●薬剤師:
治療で使う医薬品の取り扱いを担当します。痛みや症状を和らげるための薬の使い方や、注意点などについて説明します。

●管理栄養士:
入院中や退院後の食事のとり方や注意点など、栄養に関することをアドバイスします。栄養状態の評価も行います。

●臨床心理士:
患者さんのメンタル面の問題に対応し、カウンセリングや精神的なサポートを行います。

●臨床検査技師:
さまざまな臨床検査を実施・解析して、医師をはじめとするチームのメンバーに検査情報を提供します。

●理学療法士:
ケガや病気により体を思うように動かせない患者さんに対し、立つ・歩くなど基本動作能力の回復・維持のためのリハビリを行います。

●ソーシャルワーカー:
患者さんの退院後の生活や社会復帰などをサポートします。医療扶助の手続きや、保険適用がされるかの確認など、サポートする内容は多岐にわたります。

このほかにも、放射線技師や作業療法士、言語聴覚士、鍼灸師などがチーム医療にかかわることもあります。

チーム医療が発揮されるのはどんな時?

チーム医療が発揮されるケースとしては、「急性期」、「維持期」、「在宅」の3つがあります。

●急性期:
病気やケガの発症直後で、一気に症状が悪化する可能性がある段階です。
例えば激しい呼吸困難があった場合には、心電図や超音波検査は臨床検査技師、CTやX線撮影は放射線技師が行い、医師や看護師と協力してチーム医療を行います。

●維持期:
急性期治療が終わり、日常生活動作ができるようにリハビリを行う時期です。
医師や看護師のほか、起き上がりや歩行などのリハビリは理学療法士が、より細かな動作のリハビリは作業療法士が行い、それぞれが協力して治療します。

●在宅:
退院後に在宅で療養するケースです。住み慣れた場所でじっくりと療養できるように、看護師が定期的に訪問したり、作業療法士が自宅でもできる動作訓練をしたり、鍼灸師が痛みの緩和を行ったりします。

チーム医療の種類

ここまでチーム医療の概要やメンバーについて解説しましたが、具体的などのようなものなのかイメージがつきにくい方もいるかもしれません。
そこで以下では、主なチーム医療の種類をご紹介します。

●呼吸ケアチーム:
呼吸疾患や人工呼吸器を装着している患者さんが対象です。看護師は患者さんの呼吸機能に問題がないか24時間体制で観察し、必要に応じて口腔ケアや痰の排出をサポートします。

●緩和ケアチーム:
末期がんや治療が難しい難病の患者さんに対して、痛みや症状をやわらげるためのケアを行います。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などが協力して、メンタル面も含めて患者さんとその家族をサポートします。

●栄養サポートチーム:
栄養状態に問題のある患者さんに対して、しっかりと栄養がとれるようサポートします。管理栄養士が中心となって、足りない栄養素を補給したり、栄養状態を評価したりします。

●褥瘡対策チーム:
寝たきりやそれに近い状態の患者さんに対して、褥瘡(床ずれ)の予防と治療を行います。オムツや寝具を交換したり、体位をアドバイスしたり、栄養管理を行ったりします。

チーム医療 種類一覧

概要

呼吸ケアチーム

呼吸疾患や人工呼吸器を装着している患者さんの呼吸改善をサポート

緩和ケアチーム

がんなど終末期の患者さんの身体的・精神的苦痛を和らげる

栄養サポートチーム

患者さんの栄養状態の把握や管理、評価、改善を目指す

褥瘡対策チーム

寝たきりの患者さんに対する床ずれの予防と治療の実施

リエゾンチーム

抑うつなど心理状態が悪化した患者さんを精神科医療へとつなぐ

急性期リハビリテーションチーム

急性期の患者さんで心身に障害がある方を対象に、早期回復や合併症の予防をサポート

糖尿病チーム

糖尿病患者さんの重症化や合併症の予防と自己管理をサポート

感染症対策チーム

施設内の感染症予防や、対策、教育などを全般的に担う

チーム医療の取り組み事例2選

チーム医療のより具体的なイメージをつかめるように、以下では厚生労働省の資料(※)をもとに、チーム医療の実際の事例を2つご紹介します。

栄養サポートチームの取り組み例

1つ目は栄養サポートチームの取り組み例です。
栄養障害の状態にある患者さんやハイリスクの患者さんすべてに対して、チーム医療によって必要な時に栄養サポートを実施したことで、患者さんの生活の質が向上し、感染症の合併症を予防することで在院日数短縮を実現しました。
また、輸液、抗生剤等の使用量が減少して物的コストの削減につながり、労働生産性の向上による人的コストも削減できました。

〈チーム医療メンバーと役割〉

メンバー

役割

医師

1日30~40人の栄養計画を承認し、栄養サポートを実施。
チームリーダーとして週5日、14回のカンファレンス(1回2時間)に参加。

看護師

担当者が週 1 回、全入院患者の栄養スクリーニングを実施。
栄養看護師がそれらを取りまとめ、リスク患者のリストアップを行い、医師に承認された栄養計画に基づいて栄養サポートを行う。

管理栄養士

全病棟に配属され、直接患者から情報を得て、毎日30~40人の患者の栄養評価と栄養計画を作成し、栄養サポートを実施。

薬剤師

重症病棟を中心に病棟配属され、薬剤から見た栄養サポートを実施。

リハビリテーション
スタッフ

全病棟に配属され、リハビリを行うことにより、廃用を予防し、骨格筋を作ることで栄養状態の改善を図る。
その他、摂食嚥下障害に対するサポートを実施。

臨床検査技師

検査データから見た病態の把握や助言、全病棟のアルブミンマップの作成などを通じて、栄養サポートを実施。

歯科医師・歯科衛生士

口腔ケア(口腔内の機能向上を目的とした清掃やマッサージ、トレーニング)の実施。

 

急性期リハビリテーションチームの取り組み例

2つ目は、急性期リハビリテーションチームの取り組み例です。
脳卒中ケアユニット(以下SCU)の配置人員は、基準では専従理学療法士または作業療法士1名となっていますが、この配置では十分なリハビリテーションを提供することが不可能でした。

そこで、365日体制でSCUにおける急性期リハとチーム医療を実践するために、理学療法士3名、作業療法士1名、言語聴覚士 1 名を配置。これにより、SCU入室期間中、患者1名につき1日あたり平均6単位のリハビリテーションを提供することができるようになりました。
また、例えば摂食嚥下機能においては、摂食嚥下機能に関わる情報をより早く統合できるようになり、早期の経口摂取への介入や、日々変化する状態への臨機応変な対応を実現しています。

〈チーム医療メンバーと役割〉

メンバー

役割

医師

全身状況の医学的管理、急変への対応、摂食状況の把握を行い、必要に応じ、嚥下造影検査を実施。

看護師

24 時間体制で患者の全身状況を管理し、実際の食事摂取状態を観察。
言語聴覚士からの情報をもとに、食事摂取援助を実施。

言語聴覚士

医師の指示に基づき、摂食嚥下機能の評価を行い、望ましい食事形態、摂食時の姿勢、摂食方法などについて他の職種へ情報を伝達。

理学療法士

運動機能全体の評価とアプローチ。
体幹機能の評価から、摂食時の姿勢を提案し、実施。

作業療法士

体幹、上肢機能の評価から、適切な食物摂取方法を提案。


ここまでの章で、チーム医療の具体的な内容のイメージはついたのではないでしょうか?
次章からは、実際にチーム医療を導入するにあたってのメリットをご紹介します。

※出典:「チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集」(厚生労働省)をもとに記載

チーム医療の導入にはこんなメリットが!

チーム医療を行うことで、医療の質が高まったり、チームワークが増したりするなど、多くのメリットを得られます。

医療の質と安全性が高まる

チーム医療ではいろいろな分野のエキスパートが協力して患者さんの治療を行うため、通常の治療のように1人の医師+数人の看護師で対応するよりも質の高い医療を提供できます。多くの視点をもとに、より良い治療計画を立てられることもメリットです。
また、複数のメンバーが関わることで思わぬミスが減り、安全性が高まる効果もあります。

医療従事者のチームワークが増す

チーム医療を行うことで各メンバーのコミュニケーションが活発になり、チームワークが増します。日頃からコミュニケーションをこまめにとり、それぞれの仕事を見る機会が増えるため、例えば、「ソーシャルワーカーはこんなことまでやらないといけないのか」、「作業療法士・理学療法士のリハビリ技術はすごいな」といったように、各メンバーの仕事の理解が深まったり、それぞれを尊重したりできるようになります。
また、チームワークが良くなることでムダな治療を減らせるので、メンバーの負担が減ります。患者さんのケアを手厚くできるようになり、安心感をもってもらいやすくなることもメリットです。

こうしたことから、特に人手が足りない病院こそチーム医療の導入で連携力を高めることが重要になります。人手不足にお悩みのお客様は、下記記事もあわせてご覧ください。

このように、チーム医療にはさまざまなメリットがある一方で、その分課題も存在します。そこで、次章以降では、チーム医療の導入でよくある課題とその解決策について解説していきます。

チーム医療の導入でよくある2つの課題

医療レベルがバラバラだと連携不足が起きる

メンバーの職種によってスキルレベルに違いがあったり、経験が浅いメンバーがいたりするとスムーズに連携できないことがよくあります。これではチームワークが良くならず、医療の質も向上しないのでチーム医療の意味がなくなってしまいます。
特に、毎回異なるチームを編成する場合には注意が必要です。

コミュニケーション不足による医療ミスが発生しやすい

情報伝達のやり方が定まっていない場合や、情報伝達のチェック体制が整っていない場合、チーム全員に情報がいきわたらず医療ミスが発生する可能性もゼロではありません。チームの人数が多い場合や、これまでと同じチーム編成でない場合は、特にコミュニケーション不足にならないよう注意が必要です。
実際に、情報伝達ミスによって薬剤を誤投与してしまい、重大な医療事故が起きたケースもあります。

このように、複数人が関与するからこその課題もあり、どれだけしっかりと「連携」できるかがチーム医療では大切になります。

チーム医療に重要な連携。スムーズな連携に必要なこととは?

提供できる医療の質やチームワークの向上などチーム医療のメリットを享受するためには、「連携」が欠かせません。では、チーム医療で肝となる連携をスムーズに行うためには、どんな方法が効果的なのでしょうか?

職種間での情報共有の方法を決める

チーム医療では、個人のスキルよりもチーム全体の総合力が求められますが、総合力を高めるためには情報共有をしっかりと行うことが何よりも大切です。そこで、まずは情報共有のやり方を決めて、それに基づいて実際に共有していくことが必要になります。
例えば、メンバー全員が定期的に集まり、患者さんの状態や治療方針について情報共有したり話し合ったりする機会を設けると良いでしょう。電子カルテの活用も効果的です。

各職種の専門性・レベルを高める

各メンバーのスキルや経験によってチーム医療の質は大きく変わるので、専門性・レベルを高める取り組みを進めることも大切です。
そこで、経験の浅いメンバーを中心に研修・教育をしっかりと行う必要があります。看護師としてチーム医療に関わるのであれば、認定看護師や専門看護師の資格が役に立つので、そうした資格取得のサポートをすることも効果的です。

チームの調整役である看護師がリーダーシップを取る

看護師は患者さんと接する時間が長く、他の職種のメンバーとやり取りすることも多いため、チーム全体の調整を行うキーパーソンといえます。患者さんの状態をしっかりと把握しながら、リーダーシップをとって医師やその他のメンバーとコミュニケーションをとることで、より良いチーム医療を提供できるようになります。

チームで統一感のある医療用白衣を着用する

病院やクリニックがチーム医療の連携をサポートするためにできることとして、統一感のある医療用白衣を用意するということも挙げられます。おそろいの医療用白衣を着ることで、チームの一員であるという自覚や仲間意識が生まれ、チームの一体感が強まる効果が期待できます。チームワークが良くなれば情報共有やコミュニケーションもしっかりとできるようになり、医療の質や安全性が高まります。
また、おしゃれで洗練されたデザインならよりモチベーションが上がり、チームへの愛着も強まるでしょう。

チームで統一感のある医療用白衣を着用する

医療用白衣が発揮する役割について、詳細を知りたい方は下記の記事も参考になります。

医療従事者のチームワークを高めるオンワードコーポレートデザインの医療用白衣

チーム医療の質を高める方法としては、ご紹介したように統一感のある白衣をチームで着用することが効果的です。

オンワードコーポレートデザインでは多くのアパレルブランドを展開しており、そのノウハウを生かしてデザイン性と機能性に優れたメディカルウェアブランド「Raffiria」を提供しています。
現場で働く看護師の皆様の声を第一に考えた製品開発を行っており、すっきり美しく着こなせる快適な着心地の白衣を実現し、品質とファッション性を両立しています。これにより、医療業界における連携といった課題に対してもポジティブにアプローチできます。

医療業界では連携はもちろんのこと、ほかにも「医療従事者の人材不足」も課題として取り上げられており、病院・クリニックの喫緊の課題となっています。以下の資料では、医療従事者が辞めない職場づくりのアイデアについて解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

お役立ち資料

医療従事者が辞めない職場づくりのアイデア
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医療現場の深刻化する問題として求職者が少ない・離職者が多いこと による「人材不足」があり、早急な対策が必要となっています。 人材不足を解消する方法には、さまざまなものがありますが、方法に よっては手間やコストがかかるため、すべてが適切とは言えません。 そこで本書では、民間病院や小規模な病院でも始めやすいかつ、効果 のある職場づくりのアイデアをご紹介します。

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